るなてぃっく野狐

野良狐がゆっくりと錯乱していく

外国のニートを観察していたら、鳩の新たな発見に繋がった。

スペインの若者は、平日であってもよく外をうろついている。

公園なんか通ると、ひとつの公園につき2人くらいの若者がベンチに座っている。

彼らはスマホを見ていることもあれば、音楽を聴いて目を閉じていることもあるし、はたまた何もせずただ口を半開きにして前方を眺めていることもある。

 

まあ、経済的な理由があるわけで(今googleで調べてみたら、スペインの失業率は2017年4月時点で17.8%らしい)、仕方ないと言えばそれまでなのだが、それなら家に引きこもったり、ハロワ行って頑張ってこいよ、とか思う。

日本で完全なるニートが公園のベンチに座っている確率は、限り無くゼロに近いだろう。彼らはハロワに行くか、日の当たらないところで苔に進化しようとしている。スペインのように、外で光合成などしない。

 ニート文化の違いを面白いと感じながら、僕は同年代の彼らが何を考えているのか知りたい、という衝動にも駆られた。

 

そんなわけで、先々週、仕事がたまたまない平日の昼下がりに、スペイン青年の脳内を観察する課外活動のため僕は公園に赴いた。

 

幾つか公園はあるのだが、ちょうどホテルの前に大きな公園があった。

その公園を一周しないうちに、僕は理想的な人物に出逢えた。

20代半ばの男。少し体格の良い彼はおよそ平凡な恰好をしていて、音楽を聞くでもなく、スマホを見るでもなく、手に持った草をぶちぶちと細分化していた。

 

近代機器を手にしないアナログな彼は観察対象としてちょうど良い。

 

僕は彼の反対側にあるベンチに座って、しばらく挙動を見ることにした。

手に持った草をちぎり続けたり、爪を噛んだり、たまにスマホを出して何やら操作したりしていた。携帯は最低限しか見ず、用事が終わればポケットにしまうという健全な状態だった。しばらくすると席を立つが、近場にある長めの草を取ると、再び席に戻ってちぎり始めた。

 

さて、そんな感じで彼を観察し続けたが、データとしてはあまり有益でないものしか入手できなかった。日本のニートも爪を噛むだろうしスマホも触るだろうし、そう考えると

・スペインのニートは草をちぎりたがる

これくらいが入手できたデータである。これではあまりにデータとしては乏しいし、到底納得できるものではなかった。もやもやしている中、彼の挙動を見ると、ふと、携帯を見ていない瞬間に目線が動くのに気づいた。

 

僕はすかさず彼の目線を追う。

彼の目線の先には、鳩がいた。

完全に余談だが、昔友人に鳩の絵を描いたら「それは鳩ではない」と言われたことがある。彼はこれが鳩には見えないらしい。今でも不思議でたまらない。

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 さて、話を戻す。

目の前には鳩がいた。

ニートの男は、その鳩がとことこと歩く姿を、目で追って眺めていた。

何故鳩を見るのか?鳩に何かを見出しているのだろうか?

 

同じく、僕もその鳩を目で追いかけ、注意深く観察した。

そして気づいたのだ。

 

僕は今までにない大発見をして、思わずその場で立ち上がる。勢いよく立ち上がったので、鳩も驚いて飛び立ち、青年もこちらをがばっと見る形になった。

 軽く笑顔を浮かべながら申し訳ないという会釈してから、僕はホテルに戻った。

google検索で、自らの気づきを入力した。もしかすると、日本ではまだ誰も気づいていない発見かもしれない。

 

鳩が頭をかくかくする理由 _

 

普通にあった。

しばし、軽い絶望に打ちひしがれる。

matome.naver.jp

 

気を取り直して、僕は自信の研究結果のまとめに入った。

 

■スペインの同世代ニートを観察した研究結果■

スペインのニートは、おおよそ全員が平日、休日問わず公園に赴く。

日中公園に行く理由は以下の通りである。

①筋力向上のための草の細分化

②身体に光合成を促すため

③鳩の特殊な身体構造の研究

自身の健康維持に勤しみ、鳩という普遍的な生物の行動原理を理解しようとする姿勢は真面目・勤勉であり、人間の鏡であると言える。 

ー以上ー

 

以上が結論である。観察は数分にわたり行った。その間、目を離せず非常に困難であったのも事実だが、ひと通りの観察を行え、また新たな知識獲得にも繋がったため、十分満足のいく結果が得られたと僕は思っている。

 

お題「課外活動」