るなてぃっく野狐

野良狐がゆっくりと錯乱していく

子どもには、こんな大人になってほしくない

久しぶりの更新である。

仕事の都合で、残りの人生を全てスペインで過ごすことになるかもしれないと何度不安になったことか。なんとか、また日本の地を踏むことができた。

あらためて思う、日本は素晴らしい場所である。料理にしても、仕事にしても、日用雑貨を買う上でも、日本ほど快適な環境はない。慣れだろうか、長らく日本に住んでいるからだろうか?いや、おそらく海外の人からしても同じことだろう。僕はそう思う。ビバ、ジャパンである。

 

帰国した翌日に会社に出た日のこと。

まだ出張の疲労が残っていたが、午前中はレポートと清算、午後からは仕事の引継ぎを行う予定であった。日本を離れている間、他の仕事を先輩方に託したのだから、早期の引継ぎを行うのは当然のことである。午前中、隣に座る34歳上司は今か今かと機会をうかがっているようにすら感じた。

 

当の僕は、午前中にお金の清算をいち早く済ませ、レポートを全て提出したが、そこで全ての体力を使い切ってしまったために、昼休みはセミの抜け殻のような状態になっていた。

昼ごはんに宅配注文したココイチのカレーをカブトムシのようにちびちびと食べながら、その後はオフィスにあるソファに寝転がりながら午後の挙動について考えた。散々考え、葛藤を乗り越えた挙句、僕は「仕事を忙しくしている雰囲気」を出そうと決めた。

「何、今日一日だけだ、毎日そんなことをしていたら人格否定されても仕方がないが、出張帰りの一日くらいであれば万一バレたとしても周囲は暖かい目で見守ってくれるだろう」

そう優しく囁く、悪魔の一言が決定打だった。

 

結果、僕はその日「超忙しそうな人」という状態のまま、一日を終えることができた。

ここでいくつか、有効な具体例を紹介しよう。仕事に疲れて休みたいときは、是非有効活用してほしい。

 

①受信ボックスにあるメールに対して一通り意味不明な返信を行ってから、破棄する

達成事項→キーボードの音を社内に響き渡らせることで仕事している雰囲気が出る

Hello Michael, It’s a great honor to have in contact, we are now in Tanzania and I’m now looking at some used cars which were exported from Japan. The cars look really nice, I see barely any damage and the quality—as you now Japanese people cherish their belongings—were nearly just as it was a new car. Well that’s all about business, my main purpose was to come meet my friend here and we talked about our new business starting from this October. The story comes out quite fascinating but I do guarantee that it will become one big project, it’s something I surely think you will also want to make investment in. Maybe you should also come to Tanzania one day or even to Japan, if you have the interest, I’ll talk to Mr. Zanzai and organize the meeting with you. Of course Skype is one option, but believe me, you should directly meet him and “feel” his passion.

あらためて読み返すと、それはどこからか届く迷惑メールのような内容であった。タンザニアのザンザイさんという人も、宛先のマイケルさんという人も、中古車も、新しいビジネスも何も知らないし、第一僕はタンザニアになんて行ったこともないが、全てはキーボードをたたくためのメールであるからいいのだ。文章を羅列しているだけだと考える仕草がなく、リアリティが薄れてしまうため、たまに首をかしげ、歯の隙間から息を吸い込み、いくつか単語を消してからまた同じ単語を打ちなおすことがポイントである。

 

②会社にかかってくる電話をいち早く取る

達成事項→他社員との頻繁なコミュニケーションを図ることで存在感を示す

キーボードをたたきながらも、電話が来たらすかさずに取る。この素晴らしい対応力ができたら、たとえベテランであっても一目置くのではないだろうか。会社の電話は、携帯とは違い、“ぷるるるる”と鳴る前に、赤く点滅する仕様となっている。この赤点滅の時期を見計らって、誰が取るよりも前に電話を取るのだ。こうすることによって、「神の反射神経を持つ男」という評価をしてもらえるだけでなく、社内に「〇〇さん、●●さんです、1番です」とか言う自分の声が響き渡り、存在感を出すことができる。たまに電話をとらないことが、より一層リアリティを出すことにつながる。

 

③デスクトップにあるエクセルファイルをPDF化し、PDF化したデータを破棄する

達成事項→書類を作成しているような雰囲気が出る

無論、ただキーボードをたたいて、電話を取るだけでは仕事をしている雰囲気は出ない。書類を作成したという実績は、エクセルやワードをPDF化したときに初めて評価される。だから僕は、メールをひと通り打ったあと、デスクトップにある適当な見積書をPDF化して並べた。そして、いくつかを並べた後に電卓をたんたんと叩き、よくわからない数字を導き出してから、勢いよくそれらをゴミ箱に移した。

これは仕事をしている雰囲気を出すだけでなく、あまりに意味不明なその行動にある種のエクスタシーすら覚える。作ったPDFを一気にゴミ箱に放り投げる気持ちよさを、一度味わってほしい。

 

④作りかけのエクセルの表を

 

実はまだいくつかあるのだが、そろそろ帰社の時間も近づいてきたので切り上げるとしよう。

定時である。

ビバ、定時!!