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るなてぃっく野狐

野良狐がゆっくりと錯乱していく

バイオハザード鑑賞中の僕の脳内

今日はバイオハザードの最新作を映画館に見に行った。
絶対に見たかった!なんていう熱心なファンでもないが、過去のシリーズを全て映画館で見た僕にとって、これを見ることは義務にも思えたし、惰性にも思えた。熱心なファンでもないのに、わざわざお金を払って一人で見に行くのだから、どこかしらに「見たかった!」なんて気持ちもあったのかもしれないが。
映画の評論をしても仕方ないので、少しだけ。うん。初めの数分でネタバレしていたこと、ローラが果たしてクローズアップされる必要があったのか、最後の場面であの小さな試験管が・・・え、そんな効き目強いの?・・・みたいなことがあったので、矛盾や細かな描写を気にせずにあくまでエンタメとして見たら面白いのかなぁというところだった。(そもそもバイオハザードの設定がエンターテインメント要素でしかないので、映画自体に全く文句はない。寧ろ、映画に求めていた爽快感は十分にあったように思う)ちなみにここから随所にネタバレの要素があるのでご承知おきを。

にしても、観客の心の動かし方が上手だと思った。
このシリーズは、初めにアリス(主人公)のナレーションで過去の出来事をおさらいするのだが、前作を見ている人からすれば「あーそういえばそんなこともあったなぁ」なんて感じで見てしまう。ノスタルジィに浸るように、これから起こる展開に対する心の高揚を落ち着かせてくる。そのあと、時間軸が「現在」に至ったところで、びっくりさせるような展開がやってくる。背後からいきなりゾンビが現れたり、車のガラスが破れる音とともにゾンビの腕が伸びてきたり、水中からばぁっとゾンビが出てきたり。心に平穏がもたらされた瞬間を狙って驚かせにくるので、油断していたら身体がビクゥと反応してしまうほどだ。例の如く僕もこの戦法にひっかかり、驚きのあまり、情けなく「にゃぁ」と声を出してしまった。
これがカップルで座っていたのならば、二人で顔を寄せ合ってくすくすと笑い、恥ずかしさを紛らわすこともできるが、一人だとそうもいかない。
これが「わぁっ」とかなら周囲も許してくれただろうが、「にゃぁ」だとそうもいかない。

隣にカップルが座っていたのだが、声をあげた瞬間に二人から「えっ?」みたいな視線で見られるのを感じた。
平静を装い何事もなかったかのようにスクリーンを見たが、カップルからの一瞬の視線に、身体から熱が放出するのを感じずにはいられなかった。熱くなったあまり上着を脱いで、それを丸めて体育座りした身体の中にうずくめて抱いた。「にゃあ」と普段声をあげてるやつは、僕の中では「猫になりたがっている非現実的なファンタジー野郎」か「恋人に接する時にもそうやって甘えてる頬が赤い人間」である。ああ、なんとまぁ恥ずかしい声を出してしまったのだろう、とそんなことを考えていたら、いつの間にかアリスが新種のゾンビをやっつけていた。アリスが翼竜種を倒してから再び車に乗り、それがパンクして罠にかかった時、僕の思考は次の段階に移っていた。

『「にゃあ」以上に恥ずかしい頓狂な声はなんだろうか』

足を吊られ、そこに現れた幾人かのライダーに殴られながら、彼らの油断を待って反撃に出ようとするアリスを見ながら、僕はそんなことを考えていた。アリスが自分を守るために闘うように、僕も自己保身のために恥ずかしい台詞を考えていた。彼女が世界を救うために最後の決戦場に向かうように、僕も全世界の「にゃあ」と叫び声を上げてしまった人々のためにもっともな言い訳に思考を巡らせた。

手始めに「ひょお」はどうだろうかと考えてみた。
『ゾンビが突然現れる。隣に座っている男が「ひょお」と驚く。』想像したら、笑ってしまった。

スクリーン上ではちょうどアリスが反撃に出て最後の一人の頭を打ち抜いた瞬間だった。
よりにもよってその瞬間に、僕は「ふふっ」と笑ってしまった。しまった。これでは、僕は驚嘆に「にゃあ」を発し、人が死ぬ瞬間に吹き出す、情緒不安定なサイコ野郎ではないか。頭の中で出来上がったそんなサイコパス人間を掻き消すように、僕は真顔に戻る。隣に座ってその表情の変化を見ていたら、ちょっと怖いかなと思うくらいに。アリスは周囲をやっつけた後にバイクに乗ろうとしたが、手をハンドルにかけた瞬間に「乗車対象外」の表示が出て彼女の身体を電流が貫いた。それを見て、失態を侵したのは自分だけではなかったと僕は少し安心した。
しばらく、また映画に見入る。その後もワンパターンに驚かせようとしたシーンが続いたものだから、僕は先ほどの思考にまたと辿り即いた。

「ひょお」に思わず笑った自分を振り返ると、つまり「ひょお」は笑いを提供するような要素があることになる。白けよりも笑い、これは恥ずかしさよりも、むしろそんな驚嘆をあげたら名誉なことだろうなと思った。いや、恥ずかしくてそんな声を上げることなどできないが。なんにせよ、「ひょお」が斜め上に行き過ぎて恥ずかしさを掻き消してしまうのであれば、それは「にゃあ」よりも恥ずかしい頓狂声にならぬことになる。もう少し控えめで、だが、アブノーマルな声。
「せい」・・・違う。
「ぬはぁ」・・・わざとらしい。
「ふひぃぃ」・・・うっとうしい。
アリスが敵をやっつけている間、またもや僕の思考は別世界に飛んでいた。なかなか上位の声が思いつかないことに頭を悩ませている僕がスクリーンに目をやると、ちょうどローラが死んだカットだった。あの「はーい、うふふ」のローラが出演するというのは聞いていたが、彼女は登場後10分程度、僕が知らない間に死んでしまった。決め台詞の「はーい、うふふ、ローラだよぉ」を言うことなく死んでしまった。

と、前方に座っている男性がゾンビの呻き声に混じって思わず「え、ローラ・・・」と小さく言葉を放った。

で、僕は思った。「あ、これは恥ずかしいな」と。にゃあも恥ずかしいことは恥ずかしいが、目前に座っている男性もなかなかに恥ずかしいことを口走った。ローラのファンだろうか。それに、彼の隣を見てみると、女性が座っていた。・・・・・・ぬふふ?これは映画が終わった後に「あたしとローラどっちが好きなの?!」と言われてしまうパターンではないかと思った。
「君の方が大切だよ!もちろん!」そう言う彼に蹴りを入れる彼女。
「もう知らない!あたしがゾンビになってもあなたはローラを助けるために躊躇なくあたしの頭を撃ち抜くんでしょう!?」
「そりゃ、ゾンビになってしまったら生存者を救う以外道は残されてないだろう・・・」
「ひどい!ゾンビになっても愛してくれるとあの日誓ったじゃない!」
「どの日だよ・・・?」
バイオハザード第一作を一緒に見に行った日よ!覚えてないの!?」ヒステリックになる彼女とは対照的に、彼は至って冷静である。眉間に皺を少し寄せながら、困ったという表情で過去のことを思い出そうとする。
「あ、ああ、そういえばそうだったな。スタバでそう言ってたな、そういえば」
「それ私じゃないし!私はエクセルシオールよ!もう、ほんとに知らない!馬鹿!」

とか、映画中、どうしてもこういうことを想像してしまう。
誰かどうにかしてほしい。