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るなてぃっく野狐

野良狐がゆっくりと錯乱していく

猫娘

"The Lucky Cat"というウイスキーをご存じだろうか。

本社は鹿児島にある本坊酒造ウイスキーの製造は信州のマルス蒸留所という場所である。ウイスキーの市場やら事情はよく知らないが、とにかく僕はこの本坊酒造、とりわけラッキーキャットが大好きなのである。何故好きか、理由は単純で、それは猫の存在を色濃く味わえるウイスキーだからだ(猫の毛が入っているわけではない)。これまで出ていた「サン」をモチーフとしたラッキーキャットは既に販売が終了してしまっているが、このたび、新たに「アッシュ」という猫をモチーフにしたAsh 99'がシリーズ第二弾が発売された。

これを知ったのは先日、近所のバーにふらりと入った時である。以前のサンエディションがなくなっていて絶望していたのだが、代わりにアッシュが出てきた。アッシュは黒猫で、どうやら鹿児島の本社前に捨て猫としていたらしい。本坊酒造の社長はアッシュを飼うことにして(なんといい社長だろうか)、今は亡くなってしまったものの、ラベルの絵には、当時アッシュが社長を見上げる様子が描かれていた。それを思い出して、アッシュのためにこのウイスキーがあると思うと、僕はなんだか泣きそうになった。普段、感動系映画で泣いた試しのない僕が涙を流すのは、逆立ちしたまま眠れないはずの人間が寝ているのと同じくらい奇跡である。とにかく、それくらい僕は猫が好きなのだ。そして、酒に弱い(泣き上戸)。

 

ということで「野狐は猫が好きだ」というお題である。
「この世で一番好きなものは?」と聞かれれば、僕はいろいろ悩んだ挙げ句、猫と言うかもしれない。・・・弱い。
「この世で一番好きな動物は?」これだと猫、犬の二択になってしまう。余計に弱い。
だが「この世で結婚してもいいと思う人間以外の動物は?」これは猫である。要はあれだ、猫っぽい人が好きで、それに追随して猫が好きという感じか。いや、しかし、猫となら結婚できる気がする。例えば家に帰ってご飯とか作って貰ってなくてもいいし、風呂も沸かしてもらってなくていい、「私にする?」とかいう選択肢も必要ない。ツナ缶をやり、頭をしばらく撫で、あとはもうたまに横で添い寝してくれるだけでいい。それで十分に幸せだ。たとえ夜の営みがなくても、一緒にいてくれるだけで・・・夜の営みを猫とするとか一体どういう状況になるのだろうか・・・深夜によくわからない妄想をし始める26歳男がここにいる。

 

振り返れば、僕の猫好きは昔から徹底していた。昔、まだアメリカに住んでいた頃、たまに日本のアニメなんかも見る機会があったのだが、その中でも一番楽しみにしていたのが「ゲゲゲの鬼太郎」である。猫娘が登場し、怒りで顔が豹変する姿に、僕は淡い恋心を抱いていた。彼女が目をつり上げ、牙を剝きだし、爪を立てるあのシーンが見たくて、僕はテレビを凝視していた。

ポケモンが出始めた頃、ゲームボーイで友人がみなピカチュウを求める中、僕はニャースを狙いにいった。アニメ版のニャースを見て「こいつは雄なのか、雌なのか」を真剣に考えていた。イーブイの進化形でエーフィ(エスパー、紫色の猫)が出たときなど、あの身体の曲線が美しすぎていてずっと描いていた。それらは、自分は猫が好きである、という自覚が生まれる前に行っていた行動であり、抱いていた感情である。さながら幼稚園児が保育士さんに何故かどきっとする、そんな感じである。

大学の頃、猫になりたいと思い、一ヶ月「水と牛乳と魚」だけの生活をしたことがあった。大学の講義でも、内容はあまり聞かずにひたすら教授の喋る「口」を見ていた。教授が動けばその様子をじぃーっと観察した。瞬きを我慢して飲料は全て舌でぺろぺろと舐めるようにした。だが尻尾も生えず、猫に近くなることもなく、落ち込んだ。ひと月後に友人に言われたのは「なんか顔色悪いけど大丈夫?」と「馬鹿じゃないの?」だけだった。

家ではずっと犬を飼っていて、猫は飼ったことがない。父が猫アレルギーだからで、僕も猫アレルギーだからだろう。猫が好きなのに猫アレルギーとか本当にやめてほしい。神様頼む、ひとつだけ願いが叶うとしたら猫アレルギーを・・・いや、ひとつだけだとしたらもう少し考えさせてほしい。

そういえば昔付き合っていた女の子で、キスをすると無性に唇のあたりがかゆくなるという現象が起こった。何故だろう、とキスするたびに思っていたのだが、もしかして彼女は猫だったのではないか。猫っぽい要素はあった。性格と言い、見た目と言い、行動もなんだか猫っぽい子だった。最後のフラれ方も、猫のように彼女は自由気ままだったし。そうか、彼女は猫だったのか。

 

僕は猫娘と付き合っていたのだった!

 

そんなわけないと、理解はしつつ、どこかそんな非現実が本当だったらいいなと思った。