るなてぃっく野狐

野良狐がゆっくりと錯乱していく

腹カタストロフィ

「カタストロフィ」という英単語をご存じだろうか。僕は最近、この単語にハマっている。

goo国語辞典によると、「カタストロフィ」には以下のような意味がある。

1 突然の大変動。大きな破滅。
2 劇や小説などの悲劇的な結末。破局。
3 演劇で、大詰め。

 

故に、絶望的な状況に陥った時、この「カタストロフィ」をその絶望的状況に置かれた物質と組み合わせて、僕はそれを連呼する。
中でも特にしっくり来たのが「腹カタストロフィ」である。ちょうど腹カタストロフィを起こした際、僕は友人に、以下のようなメールを送った。

「牡蠣」

牡蠣、とだけ送られてきた友人は、当然のように、こんな風にメールを返してきた。

「??」

そこで僕は、例の言葉を投げる。

「腹カタストロフィ」

間もなく友人から返ってきた返事が以下の通りである。

「wwwwwwwwwww」

 

牡蠣、腹カタストロフィという二文字で、僕は友人に草を生やせた。「ちょ、今電車の中wwやめろww」と追加で送ってきた彼は見事なまでにこの造語の意味を理解してくれていた。こうやって文章で説明していると、面白みもないのだが…。これを今書いている僕も、全くの無表情だ。

(・ー・)

こんな表情である。とても綺麗な無表情である。だが当時の僕は、トイレで項垂れ、時に蠢き、奇声を発しながら、友人の「w」のみのメールを見て、そしてその後のメールを見て、死にそうになりながら一緒に笑った。僕は苦悶の笑みを浮かべていたに違いない。

 

様々な単語をカタストロフィと掛け合わせてみたものの、やはり「腹カタストロフィ」が一番しっくりくる。その理由を僕は考察してみた。

・まずカタストロフィという長い単語の性質上、前半部分も長くなってしまうと均一性が取れなくなる。例えば髪の毛がぼさぼさのことを「髪の毛カタストロフィ」ということが出来るが、この場合、髪の毛、カタストロフィ、それぞれを独立した単語として理解できてしまう。「毛カタストロフィ」だと、短すぎて何かわからない。組み合わせる単語の長さは、二文字がちょうど良いのだ。

・次に、組み合わせる単語の語尾がか行でないことが望ましい。欲を言えば、付ける二文字両方が「か行」でないのが望ましい。最悪なのは「肩カタストロフィ」である。区切りを間違えれば「カタカタ」と「ストロフィ」の組み合わせに思われてしまう。ストロフィがわなないている状態である。全く意味不明である。「ストロフィって何?」と友人が問うてくるのが目に見える。

・最後に、カタストロフィと組み合わせる単語は身体の一部であることが望ましい。前述の通り、カタストロフィとは突然の大変動、大きな破滅などの意味を指す。例えば、夏の暑い日に冷房が壊れることを「熱カタストロフィ」なんて安易に表現してはいけない。そうなると、友人は地球温暖化の問題に対してメスを入れにくるだろう。花粉症のことを「春カタストロフィ」なんて表現したら、四季がひとつ失われてしまったのかと心配をかけるかもしれない。カタストロフィは、ささやかでなければならない。身体の一部がカタストロフィしているくらいが、ちょうど良いあんばいなのだ。

 

無論「腹カタストロフィ」推しの僕だが、他にも使えそうなカタストロフィはある。是非、有事の際には、使ってみて欲しい。

鼻カタストロフィ:花粉症
指カタストロフィ:足の小指を箪笥にぶつけた
舌カタストロフィ:好きな子に告白する際緊張して舌を噛んでしまった
胸カタストロフィ:胸が小さくて嫌(女性)、雄っぱいあって嫌(男性)
肘カタストロフィ:飲み会の席でテンションがあがり肘でビールをこぼしてしまった
首カタストロフィ:180度まわった

 

彼らでアイドルグループを結成したら面白そうだ。鼻カタストロフィがティッシュで鼻を噛む横で肘カタストロフィがテンションあげてビールをこぼす。こぼれたビールを避けようと進行方向を変えた指カタストロフィは箪笥に足の小指をぶつけ、舌カタストロフィの上に転げおちる。舌を噛んだ舌カタストロフィも倒れこみ胸カタストロフィの雄っぱいに触れ、触れられた胸カタストロフィの「いやん」という声に吐き気を催した腹カタストロフィはトイレに駆け込む。事態を収めようと慌てた鼻カタストロフィは「落ち着けよ!」と叫ぶが鼻が詰まってなにも言えなくて背後にあるティッシュボックスを取ろうとしたら首が180度まわって首カタストロフィになる。腹具合がよくなった腹カタストロフィが戻ると転がっていた首カタストロフィにつまずき指カタストロフィに、指カタストロフィのアイデンティティを失った元指カタストロフィは舌を噛み切って舌カタストロフィに。

 

もう本当にその場所はカタストロフィである。